治りにくいキズ

治りにくいキズ(難治性潰瘍)とは

人の身体は、キズができれば死ぬ直前までキズを治そうとするとも言われていますが、通常であれば治る方向に向かうべきキズが何らかの原因によりなかなか治らない、もしくは悪化することを「難治性潰瘍」といいます。

床ずれ(褥瘡)も難治性潰瘍の一種です。床ずれは、骨が突出している部位に持続的な圧迫やズレ(剪断力と言います)が加わってできたキズです。

治りにくいキズ(難治性潰瘍)の原因は様々です。形成外科では難治性潰瘍がなぜ治りにくいのかを判断し、キズが治ろうとする力を妨げる因子を除去して、治りにくい状況を改善するように治療します。

治りにくいキズ(難治性潰瘍)とは

治りにくいキズ(難治性潰瘍)の主な原因

  • 外傷性

    常に外力が加わるために治りにくくなっている状態です。

  • 感染

    ばい菌がついているため治りにくくなっている状態です。

  • 糖尿病性

    糖尿病に起因する血行障害、末梢神経障害などが原因で治りにくくなっている状態です。

  • うっ滞性

    長時間立ちっぱなしや浮腫などが原因で静脈血液の流れが悪くなり、うっ滞して治りにくくなっている状態です。

  • 動脈性

    動脈血が足りなくて治りにくくなっている状態です。

  • 膠原病性

    膠原病(リウマチなど)が原因で治りにくくなっている状態です。膠原病という病態自体でキズが治りにくくなりますが、治療に用いるステロイドや免疫抑制剤などでもキズの治りが悪くなります。

  • 放射線性

    放射線照射された皮膚は再生力が弱く、治りにくくなっている状態です。

治りにくいキズ(難治性潰瘍)の主な治療法

難治性潰瘍

傷が治りにくくなっている原因を明らかにし、それを排除してキズが正常に治る方向へと進むように治療を行います。

例えば糖尿病の方は、血糖値が高いだけでなく、血行が悪く、感染を起こしやすく、足の変形があります。食事やインスリンを用いて血糖コントロールをし、血流が良くなるような治療を行い、感染を防御すべく壊死した組織を除去したり抗生剤を投与したりします。また足の変形で局所的に外力が加わるならば、装具などで外力がかかりにくくなるようにします。

このように、一つの難治性潰瘍だけでも様々な要因があることがあります。そのため、当院の様なクリニックで治療が完結できない事もあり、その場合は連携施設に紹介いたします。

難治性潰瘍

とこずれ(褥瘡)

とこずれは長時間の圧迫や剪断力(ずれ)によって組織が損傷されて生じるキズで、多くは難治性潰瘍となります。仙骨部や坐骨部、大転子部、踵部、腸骨稜部など骨が大きく突出している部位に好発します。元々小さな褥瘡があったところに、ばい菌感染を起こして一気に増悪してしまったというのが良く見られるケースです。褥瘡ができる方は全身状態が良くない事が多いので、感染が併発すると命に関わることもあり得ます。

治療は、外傷性難治性潰瘍なので、外力が加わらないようにして適切な創部処置を行う事になります。入院して十分なマンパワーを借りて治療すると、治癒に導くことが可能なケースが多いです。

ただ褥瘡は、高齢化社会、介護問題、施設不足といった現代の社会的な問題と深い関わりがあります。褥瘡があっても入院できる施設を見つけられない方は多いですし、一旦褥瘡自体が治癒しても同じ状況が続けば将来的に必ず再発します。

褥瘡の予防や治療には、マンパワー、資材、コストを多く要します。今後さらに増える高齢者に、十分な褥瘡予防は難しいと考えます。

当院ができることは、新規褥瘡に対してなるべく早くに介入し、悪くならないように管理を行い、訪問看護指示書を発行して自宅でのケアを充実させることです。残念ながらクリニックでできることは微力ですが、創部管理のノウハウは伝えることができると思いますので気軽にご相談ください。

とこずれ(褥瘡)