キズアトとひきつれ

キズアトとひきつれとは

キズアトとは、ケガやヤケド、手術などによってできるキズの跡のことで、残念ながら人間の身体は、一度キズをしてしまうとキズアトが必ず残ります。

そのキズアトを瘢痕(はんこん)と言い、形成外科ではこのキズアトをいかに目立たないようにするかを考えて治療を行います。

また、キズアトが盛り上がってしまった「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」や、ひきつれてしまった「瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく)」「ケロイド」も形成外科の治療対象です。

キズアトとひきつれとは

キズアトとひきつれの種類

  • 成熟瘢痕

    成熟瘢痕

    成熟瘢痕とは、キズが治癒した後に皮膚表面に残ったキズアトで、時間が経つにつれて赤みがなくなり白~肌色になったものです。

  • 肥厚性瘢痕

    肥厚性瘢痕

    肥厚性瘢痕は、キズが治癒した後時間が経っても赤みが引かず、ミミズ腫れのように盛り上がったキズアトです。

    傷口が大きかったり、深かったり、治癒に時間がかかった場合に肥厚性瘢痕になることが多く、炎症がなかなか引かないキズアトのようなものなので、関節など動くと引っ張られる場所でよく発生します。

    時間はかかりますが自然に小さくなっていくこともあります。

  • ケロイド

    ケロイド

    ケロイドは、キズが治癒した後にできる盛り上がったキズアトで、肥厚性瘢痕よりも大きく凸凹した形状をしています。ケロイドの発症にはケロイド体質、肌の色素の濃さ、遺伝的要因など様々な原因があります。

    肥厚性瘢痕との違いとして、数年経っても範囲が広がっていったり、痒みや痛みがあったりすることが特徴で、胸の正中部、三角筋部、肩甲部、耳介、耳後部、恥骨上部によくできます。

  • 瘢痕拘縮(ひきつれ)

    瘢痕拘縮(ひきつれ)

    瘢痕拘縮は、キズが治癒した際にキズアトが周囲の組織に引っ張られて硬くなり、ひきつれを起こして関節や筋肉の動きが制限される状態を指します。

    多くは正常の皮膚が足りない状況なので、局所皮弁術(皮弁作成術)や皮膚移植(植皮術)などの手術を要します。

キズアトとひきつれの主な治療法

治療には、内服薬や外用薬、注射、圧迫固定、手術、放射線など様々ありますので、その「キズアト」の状態に応じて最適と思われる治療を選択します。

内服治療

トラニラストなど、かゆみを抑え、炎症細胞が出す化学伝達物質(サイトカイン)を抑制するお薬を飲んでいただく治療で、他療法と併用することが多いです。

内服治療

外用薬治療

ステロイド剤入りのテープや軟膏を患部に貼ったり塗布する治療です。

外用薬治療

注射治療

ステロイド剤などを患部に直接注射する治療です。即効性がありますが、痛みがあることが欠点です。

注射治療

固定・圧迫療法

テープやスポンジ、サポーター、ゲルシート、コルセットなどを用いて圧迫・固定する治療法です。

固定・圧迫療法

手術

小範囲のキズアトや肥厚性瘢痕は、きれいに切除して縫合することである程度はきれいにすることが可能です。しかし、キズアトがゼロになることはありません。

耳介以外のケロイドは手術によって最終的にケロイドが増悪することが多く、手術が第一選択になる可能性は少ないです。手術をするにしても放射線療法と組み合わせるのが一般的です。そのため、まずは内服や外用薬、注射で治療を行います。

ただ、耳介のケロイドは再発率が少ないため、手術の適応になります。単にケロイドを切除するだけでは皮膚が不足し、耳介の変形が起こる可能性があるため、様々な工夫を行います。

瘢痕拘縮を起こしているキズアトは、局所皮弁術(皮弁作成術)や皮膚移植(植皮術)などで、ひきつれを解除しつつ足りない皮膚を補充する手術を行います。

手術

放射線治療

放射線療法のみで治療する報告はありますが、一般的には手術と組み合わせて行います。当院には放射線の装置がないので、必要であれば他院と連携させていただきます。

放射線治療